50代の生き方

仕事と暮らしは、別々のものだと思っていた|50代で気づいた「人間らしい暮らし」

会社員だった頃の私は、すべてを仕事に合わせて生きていました。

朝起きてすぐに、仕事のことを考える。

その日の予定だけではなく、半年以上先のイベントのことまで考える。

出張の移動時間も仕事の時間。

休日も、予定がなければ会社にいる。

仕事が忙しいことを言い訳に、暮らしに使う時間をどんどん削っていました。

もちろん、それが嫌だったわけではなく、私自身好きでやっていたことです。

むしろ、料理をする時間があるなら仕事をしたい。

一分一秒でも多く仕事をしたい。

当時は、本気でそう思っていました。

今振り返ると、「働くこと」だけが「暮らしのすべて」だったのです。

会社役員を経て50歳で独立。現在はWebメディアやECサイトの運営を中心に活動し、「LETTRE Journal」を立ち上げました。

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移動時間も、仕事の時間だった

出張が多く、新幹線の中でもPCを開いて仕事をしていました。

移動時間は「休む時間」ではなく、「仕事を進める時間」。

メールを確認したり、資料を作ったり、スケジュールを確認したり。

常に次の予定を考えていました。

半年以上先に予定されているイベントに向けて、今何をしておかなければならないのか。

そのためには、どんなリスクが考えられるのか。

もしスタッフの誰かが休んだり、辞めてしまったりしたら、どう対応するのか。

仕事は、ずっと先を見ながら進めていくものでした。

気がつけば、季節の感覚さえ薄れていて、お花見をするタイミングを逃し、夏が来たと思ったら、次は秋を通り越して冬になっている。

季節を楽しむことよりも、目の前の仕事と、その先にある予定のほうがずっと大切だったのです。

家は「寝るために帰る場所」だった

当時の家は、暮らす場所というより、寝るために帰る場所でした。

料理をしないキッチンはいつもきれいで、お湯を沸かしたのがいつだったのか、思い出せないほどです。

朝は出社してからコーヒーとフルーツを口にし、夜は外食がほとんどでした。

家事を疎かにしていても、それを「仕事を頑張っている証」だと思っていました。

料理をする時間があるなら仕事をしたい。

一分一秒でも多く仕事をしていたい。

当時の私は、本気でそう思っていました。

在宅で仕事をするようになって、暮らしが変わった

その後、私は50歳で独立し、在宅フリーランスになりました。

仕事部屋を設けず、家の中でいちばん居心地がよいリビングで仕事をすることにしたのですが、これまで見ぬふりをしてきた様々なことが気になり始めます。

もともとのめり込みやすい性質のため、一度掃除をし始めるととことんやらないと気が済まなくなり、予定していた時間をオーバーしてしまうこともしばしば。

時間割を作ったのに思うようにいかなくて、モヤモヤしていました。

でも、ふと思ったんです。

自由に働ける在宅フリーランスになったのだから、今までのようにルールを決め過ぎず、柔軟に仕事と暮らしのバランスを取ればいいと。

ゆっくり朝食とコーヒーを味わってから、仕事を始める。

仕事にひと区切りついたら、ベランダの植物に水をやり、花がらを摘む。

運動不足解消のために、掃除をこまめにする。

仕事をしている時間のすぐそばに、生活があります。

仕事と暮らしというのは、別々に存在するものではなく、もともと混ざり合っているもの

起きている時間のほとんどが仕事の時間だった私にとって、大きな変化でした。

次第に、「暮らしを整えること」が、仕事と同じくらい大切なものになっていきました。

あの頃の私と、今の私

以前は、朝7時半には出社し、20~21時に帰宅する生活でした。

朝食は出社してコーヒーを飲むだけ。

夕食はほぼ外食。

予定がない休日も会社にいることが多く、周りから「会社に住んだほうがいいんじゃない?」と言われるほどでした。

私があれほど仕事に突っ走ることができたのは、会社で責任のある立場にいたこと、まだ40代で体力があったこと、そして子どもがいなかったことも大きかったと思います。

仕事のことだけ、自分のことだけを考えられる環境にありました。

当時、仕事ばかりしていた自分を誇らしく思っていましたし、仕事に夢中になれることが楽しかった。

できれば、手放したくなかったのですが、自然災害によって事業は中断せざるを得ませんでした。

ただ、もしあのまま50代になっても同じような働き方を続けていたら、私はどこかで倒れていたかもしれません。

今は自宅が仕事場になったので、言い換えれば「会社に住んでいる」ようなものです。

でも、働き方や価値観はガラリと変わりました。

9時半から17時を目安に仕事をして、遅くても18時にはパソコンを閉じる。

以前の私からすると、考えられないような生活です。

もちろん、今も仕事は大切です。

仕事をすること自体が好きですし、やるべきことがあれば、集中して取り組みます。

でも、「空いている時間は一分でも多く仕事をしていたい」と思っていた私は、もうここにはいません。

今は、仕事と同じくらい、家を整えることや家族との時間を大切に思えるようになりました。

あの頃の、仕事人間だった自分も気に入っていましたが、今こうして穏やかな時間の中にいる自分も悪くないと感じています。

「人間らしい暮らし」を取り戻している

フリーランスになって、働き方を変えて、一番大きく変わったこと。

それは、疲れたら休めるようになったことです。

以前の私は、止まることができませんでした。

私が止まったら事業が止まってしまい、会社やスタッフ、取引先に迷惑がかかる。

そう思って、ずっと、ずっと走り続けてきました。

でも今は、疲れたら休むことができます。

小さな不調にも気づけるようになりました。

両親を思いやる時間も増えました。

以前なら「仕事より後にすること」だった時間を、今は大切にできる。

仕事に支障が出るかどうかではなく、自分が心地よく過ごせるかどうかを考える。

そんなふうに、自分の時間を自分のために使えるようになったのです。

あの頃の手応えや成功とは比べ物にならないほど、小さな変化かもしれません。

でも、それは私にとって、とても大きな変化でした。

これまで仕事のために後回しにしていた「暮らす時間」を、私は少しずつ取り戻しています。

仕事をするために生きるのではなく、仕事も暮らしも、同じ時間軸の中にある。

50代になって働き方を変えたことで、私はようやくそのことに気づきました。

そして今、私は少しずつ、「人間らしい暮らし」を取り戻しています。

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